書籍「世界の空き家対策」をまとめてみた!アメリカやドイツなど参考になりそう

空き家 対策
世界の空き家対策 by Keisuke Kuribara

先日、『世界の空き家対策: 公民連携による不動産活用とエリア再生』という本を購入し、参考になるなと感じたのでまとめて紹介したいと思います。

新書はAmazonで2000円ほどですが、ブックオフでは1500円の中古品があったため、僕は中古で購入しています。

この本はどんなもの?

少子高齢化が進む先進国では、空き家が必ず一定割合で発生します。

しかし、日本は大きな問題となり抜本的な対策がなされていない中、世界では空き家問題を大きくさせない取り組みがなされています。

この、海外の事例を調査し紹介することで、日本でできることはないかと考えさせられる本です。

官民一体となり、居住者がいないだけの物件でなく、何かしら悪影響を及ぼす「問題空き家」を減らす方法について学べます。

ただし、実践書というより教科書というか、学びの要素が大きいです。

各国の状況と施策

では、日本を含めた世界各国の状況と施策について、簡単にまとめていきます!

日本

2013年に総務省が発表したデータでは、820万戸の空き家があり、割合としては13.5%、10年前と比較すると107万戸増加しています。

この内、特に問題となるのが、買い手も売り手も募集されず、放置された空き家です。放火や不法侵入など犯罪行為を生む可能性があり、大きな問題となる可能性が高い。

空き家が増加したのは、

  1. 人口減少
  2. 親世代の物件を子が引き継がない
  3. 市場性の乏しい物件が増えている
  4. 解体し更地になると固定資産税が跳ね上がるので放置されている

といった背景が挙げられます。

また、戦後の高度経済成長期は比較的短期住み替えを想定した、品質の高くない新築物件が多数建設されたことも挙げられます。

腕の立つ棟梁がないがしろにされたわけですね。

土地神話が日本には文化としてあり、諸外国と比較して新築を好む志向が残っているのも要因の1つ。

さらに、相続時に登記されない物件は増え、所有者の分からない空き家・空き地も増加傾向にあります。

日本で行われている対策としては、次のようなことが挙げられます。

空家等対策特別措置法(空家法)で、危険な空家を自治体が「特定空家」に認定し、助言や代執行の措置を取れるようにしています。

勧告を受けると敷地に対する固定資産税が上がったり、代執行まで行くと解体費用(数百万円)が所有者に課されることとなります。

ただし、請求されても所有者が支払えないなどで、自治体は未回収となるケースが多いようです。

空家バンクとして、自治体が空き家物件の情報を公開していますが、物件掲載を募ったり、利活用の方法を提示するなどしていない事が多く、実質機能していないケースが30%ほどになるそう。

これが、僕がブージーエステイトを作った理由ですね。

まとめると、国をあげて法律を制定していますが、仕組みとしてうまく回っていないというのが現状です。

課税強化や強制権を作ることは有効でしょうが、中古住宅としての市場を作ることはさらに重要となります。

僕の理解では、自治体つまり公が制度を整えつつ、マーケットをメイクするのは企業つまり民であり、民として流動性を上げるビジネスを構築しなければならないと思います。

ここが、Boujeeyです。

点ではなく、面や線(街づくりやコミュニティなどを構築する)で全体最適化を行わなければイケませんね。

アメリカ

アメリカは、日本以上に社会的・経済的意義の大きなものとして住宅が扱われています。

連邦政府は基本的に持ち家を推奨する方向であり、戸建てを買ったり売ったりして住み替えする文化があります。

リーマンショックの影響を受け、借金を支払えない人が自宅を差し押さえれることで、持ち家比率は少し落ちているようです。

また、テック企業が集まるエリアと工業地帯で地価の乖離も広がっており、市場の二極化が問題となっています。

アメリカの住宅市場は様々な階層に適応できるような不動産流通システムが確立されています。所得に応じた住替えが容易な土壌というわけです。

したがって、住宅は消費財ではなく貯蓄手段と考えられていることから、改築や増築などのリモデリングが活発。

結果、消費者は新築にこだわらない価値観となっています。

この基盤となっているのが、コミュニティ・ランド・トラストとランドバンクです。

住宅ローン破産者が急増した一方、総住宅ストック戸数は増加していて、センサス調査(2010年)で空き家率は10%前後でした。

調査方法や定義が異なるので一概に言えませんが、割合でいうと日本とさして変わりませんね。

しかし、アメリカではリモデリングされた物件への評価方法が普及しているため、流通する住宅は多く販売されています。

アメリカでは不動産売買において多数の専門家が関与し、成立後はエスクロー会社が買い主からの預託金を受付け、権利等の調査が行われます。

エスクローとは、商取引の際に信頼の置ける第三者を仲介させて取引の安全を担保する第三者預託です。

各種調査に問題ないことが確認され次第、法務局で登記されます。

そして、決済を行うエスクロー会社は中立性と安全性を担保するため、ライセンスを取得しています。エスクロー会社は、エスクロー業務のみであったり、弁護士が行うなど、州によって異なるようです。

経費の負担は大きいですが、売買の効率化と確実性は担保されているわけですね。分業化されていることから、雇用増加や消費者の安心も生まれます。

こういった透明性ある不動産市場を構築しようとするのが、マルティプル・リスティング・サービス(MLS)呼ばれるデータベースで、標準フォーマットで物件を登録するようエージェントに義務化しています。

MLSで物件が統一されることで透明性は増し、不動産鑑定士による公正・効率的な評価システムが出来上がっています。

すなわち、アメリカでは空き家発生を押さえる取り組みが「システム化」されていると言えます。

  • MLSによって住宅情報が網羅的に整備されている
  • 分業化・役割化が明確で全体的に生産性が向上する仕組みである
  • 各専門家への手数料が確率されている
  • 鑑定士による不動産を評価する制度が普及している
  • 決済を担うエスクローシステムが普及している
  • 不動産の契約履歴を管理する権原保険会社がいること民間法務局の役割を果たしている(紛争防止)
  • 不動産検査が普及しているため取引が安全である
  • 各専門家が連携することで不動産流通が円滑になっている

アメリカは徹底して仕組みを普及させており、不動産登録もきっちり制度化されているので、所有者不明になりづらいわけです。

とは言っても経済格差における空き家は発生します。

そこで、廃棄された物件を取得して権利を整理、再利用を促す非営利団体「ランドバンク」が設立されています。

また、地価向上を狙う非営利団体の「コミュニティ・ランド・トラスト」という組織もあります。

地域でまとめて土地を取得し、産業を生み出すことで地価向上と収益を狙っていく取り組みです。

アメリカにおいては、

  1. マルティプル・リスティング・サービス
  2. ランドバンク
  3. コミュニティ・ランド・トラスト

がキーワードとなります。

公と民が連携して不動産を再開発し取引を活性化するアメリカの仕組みに、学ぶことは多いですね。

ドイツ

人口減少や新築需要と供給過多が空き家問題の背景にある日本ですが、日本より先に人口減少へ直面したのがドイツです。

ただし、ドイツでは移民政策が取られており、近年では住宅需要が増加しているようです。

ドイツは土地に権利があるのは日本と同様ですが、責任や規制がより明確にされているという特徴があります。

移民で人口が増加傾向にあるドイツは都市圏を主として強い住宅需要を誇っているでそうです。

また、単独世帯が増えているのは、日本と非常に似ています。

つまり、世帯数は今後も伸びるだろうと予想されるわけです。しかし、ドイツの新築戸数は32.3万戸に対し、日本は97.4万戸と3倍近くになっています(2016年)。

そりゃ、空き家増えますよね。

居住形態も面白くて、ドイツは賃貸のほうが所有より多いという結果が出ています。

そんなドイツの空き家率は8%程度です。

ドイツは一般的に築年数の長い住宅が多く、中古住宅が活用される傾向にありますが、やはり古い住宅のほうが空き家率は高くなっています。

空き家対策は連邦政府が積極的にすすめているようです。

まず、所有権が土地に存在し、建物所有権は土地に付随します。そして、民法で住宅所有者は住宅建物について適切な状態で賃借人に賃貸することが義務付けられています。

したがって、管理不十分だと修繕命令や取り壊し命令が政府より下るのです。なお、命令より発生する費用は所有者負担となります。

とはいいつ、空き家が0になることはなく、多く発生してしまうエリアも出てきます。

こうした場合、都市開発を行う地域活性化プログラムがあります。

  • 都市改造:人口減少地域の活性化させる
  • 社会都市:老朽化したエリアの価値向上
  • 都市開発のイニシアチブ:不動産所有者が費用を負担しエリアの環境改善を行う
  • 都市・地区中心地活性化プログラム:都市の中心部で空き家が増加したエリアを回復させる
  • 小規模市町村ーローカル協力ネットワーク:人口減少や高齢化がすすむ小規模エリアで維持できない公共施設等を再生させる
  • 未来の都市みどりプログラム:都市における質の高い緑化地域を作る

また、所有者不明土地が発生しないよう、所有権移転の際の登記が義務付けられています。

こうした制度だけでなく、地方自治体や専門家でアライアンスを組み、意見交換から計画まで行われています。

こうしてみると、ドイツは政府や自治体主導で積極的に管理すること、再生させることに注力している印象をうけます。移民受け入れも空き家減少に限って言えば、効果は大きいはずです。

つまり、問題を早期解決できるよう管理不全対策がなされ、都市開発を促すことで利用不全対策も行い、エリア再生することで持続性を高める取り組みを学ぶことができます。

フランス

フランスはドイツと同様に移民政策もあり、人口は増加しているが、同時に失業率は日本と比較して相当高いという状況です。1人あたりのGDPは日本とほぼ同じですね。

もちろん、寿命は長いです(世界最高水準)。

空き家率は、日本と定義が異なりますが、8%程度となっています。

そして、住宅価格は値上がりを続けており、住宅を所有しているかどうかで所得格差が開いていきます。

日本で問題とされる所有者不明土地は、コルシカ島を除くと大きな課題となっていないそう。

この要因は、相続開始後10ヶ月以内に相続登記義務があり、また登記の専門家である公証人が頑張っているという背景があります。

ただし、登記義務を破っても罰則はないらしいです。

公証人は相続の資格、税務申告、登記までをワンストップで行うことで、土地の相続を効率化させています。

ただし、所有者不明土地が0にならない理由は、土地が高すぎて費用が高額になる場合と、安すぎて費用を負担する気にならない所有者が相続放棄する場合があるからです。

前提としてフランスは人口が増加しているので、空き家を住宅市場へ出すことが重要だと考えられています。こうしたことから、課税等の仕組みを発展させ、管理不全の場合には公権力を介入させることで解決させてきました。

税金は非常に興味深く、意図的に居住可能な住宅を空き家とした場合、市町村から課税を受けます。空き家税というものです。

また、無主の財産は市区町村に帰属し、市区町村が所有権を破棄すると国に帰属する法律になっています。こういった土地は自然環境の保護等に活かされたりします。

さらに、空き家だけに限らず、衛生状態や保管状態が悪いと危険除去命令が発令されます。ここは日本の建築基準法に近いところがあります。

そして所有者は命令執行の義務を負い、自治体が介入した場合でも各費用は所有者に請求される仕組みです。

日本は、多様な政策面で学ぶべきところがアリそうです。また、アメリカのランドバンクのように空き家再生を行う事業者の存在も大きいようです。

イギリス

イギリスは、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドで構成された国です。したがって、本書では可能な場合には全土、基本的にはイングランドでの取り組みについて書かれています。

イギリスも移民によって人口が増加傾向にあり、ここがブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)で摩擦を引き起こした論点(問題)です。

自国民は少子高齢化傾向の先進国でしたが、人口は増加しているところが日本と異なります。

面白いことに、イギリスは新築住宅に前向きで、空き家問題より新築へという流れを政府が作っています。

これは、リーマンショックで極端に減った新築物件着工を増やしたい思惑があると想像できます。

空き家統計に関しては一概にいえず、日本では別荘を空き家として扱いますが、イギリスでは扱わなかったり、日本の標本調査に対してイギリスは全数調査とするなど、統計値算出方法にかなり違いがあるので比較はしずらいようです。

政府公式統計では、イングランドの空き家数は2008年をピークに減少しており、空き家率は2.5%となっています(既出ですが、算出方法に違いはあります)。

イギリスにも空き家が発生しやすい地域とそうでない地域がもちろんあり、これはなぜなのか分析されています。

要因は多くの場合、家計所得の低さ、貧困地域、住宅価格が低い、長屋建てかつ古いといった特徴でした。

また、反社会的行動や犯罪数の多さも関係しています。これは日本と異なる特徴です。

さらに、人口が増加傾向にあるため、買って値上がりを待つスタイルの人も多く、イングランドにおける最大の空き家問題は、「利用可能な住宅が使われていないこと」だと言えます。

そんあイギリスは空き家問題の法的な強制力を持っています。

そして、

  • 中堅所得者向けに改修するプログラム(資金提供)
  • 通常の地方税の150%まで行える重課税
  • 利用状態にするための管理命令
  • 強制売却
  • 自治体間で空き家対策のネットワーク組織を構築

などなど、非常に強い公権力を使っています。

日本の過疎問題とイングランドの都市衰退では、そもそも問題点が違います。

しかし、自治体が強制力を持ったり、課税を増やしたり、など学べるところはありますね。

韓国

不動産慣習が日本と大きく異なる韓国でも、やはり空き家は増加しています。

問題は似ており、少子高齢化や景気後退に伴う婚姻率の低下などを反映しています。

そして、ソウルの住宅需要が非常にタイトであるのに対し、地方では過疎化が進んでいるあたりは、日本と東京を見ているようです。

空き家率は6.7%(2016年)でしたが、10年間で3倍近くになっており、地方では深刻化しています。

韓国は日本と異なり、共同住宅は戸建てよりも平均床面積が大きいのですが、これは「月の村」と呼ばれる老朽不良住宅が存在しているため。

月の村の撤去費用や住居改善がネックになり、なかなか再開発が進んでいませんでした。

そんななか、韓国政府は2016年に建築法を改正し、空き家対策を初めて立法化しました。

法律で景観や環境を損なう場合には撤去等を命じることができるようになり、所有者は60日以内に措置を履行しなければいけません。

さらに、2018年には小規模住宅の整備に関する特例法も施行されています。

空き家だけでなく不良物件も対象とすることと、事務手続きを簡素化することで都市開発を活発化することが出来ます。

また、自治体の長は、空き家情報を調査するために必要な資料や情報提供を要請することもでき、要請を受けた機関は要請に従わなければいけません。

開発する際は、事業化のための支援も民間へ提供します。

韓国から学べることは、動きの速さです。

事業手法をスピード感持って確立させることで、空き家問題を有効に対策できているのです。

まとめ

日本、アメリカ、ドイツ、フランス、イギリス、韓国の事例をとても簡単にまとめて紹介しました。

さらに詳しい事例や統計は本書を手にとって見てください。

問題を解決する際、何か他の事例を探すことは効率を高めます。

ここで書かれていることを、日本の空き家問題解決に活かせるよう頭においておきたいです!

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